縁切りマイスターのほーりーです。私の連載コラムでは、縁を切りたい対象との向き合い方を紹介します。
まずそもそも、この本光寺の縁切り寺プロジェクトとは何か。私は日本各地の寺社を5000以上はお参りし、縁結びスポットを特集した本も出してきました。
寺社が好きな男女の婚活イベント『寺社コン』を10年に渡って開催し、400人以上を結婚に導いています。さらにお坊さんや神主さんの研修会で講師をしたり、複数企業の顧問を務めたり、株式会社寺社旅なんていう会社まで作ってしまいました。
もともと趣味だった寺社巡りが仕事となり、あちこちで寺社の入り口作りを行うようにもなったわけですが、そんな生活の中で感じたことは縁結びのご利益は日本各地にあふれているのに、縁切りのお寺や神社は数えるほどしかないということです。
ですがそれは縁結びと比べて縁切りに、意義がないからではありません。どちらかと言えば華やかで楽しさがある縁結びはお坊さんも神主さんもこぞって宣伝しますが、負のイメージが漂う縁切りを表に掲げる寺社は少数です。
しかし仕事にしろ恋愛にしろ、ゼロからスタートできる方は幸せです。マイナスから始まる方や、過去の人間関係、生活習慣などをリセットしなければ進めない方もたくさんいます。
このため、まずは「縁切り」を新しく生活に取り入れられるものとして定義したい。究極的には人生の中で失敗しても四面楚歌に陥っても、再スタートが切れるんだということを伝えたい。人生が常に計画的にうまくいき、それがあるべき姿なのだという風潮を壊したい。
嫌なことから、もっと逃げよう。空気を読んで、惰性で悪いものと付き合い続けることをやめよう。そうしたことに後ろめたさをもたないようにしよう。それがこの縁切り寺プロジェクトが伝えたいメッセージです。
そして本光寺には、縁切りの神さまとして知られる源頼政公が祀られています。そこで住職(zyusyoku)に縁切りをもっとポップで明るいものにできないか。深刻に思い詰めてしまった方にも、悩みに対して楽しいアプローチが一つあれば、人生の選択が変わってくるのではないか。
そんな話をさせて頂きました。
この意見にご賛同頂いたことで、本光寺ではダーツで決める縁切りなど、様々な縁切り企画がスタートしています。
もちろん、辛いことや離れたい縁と距離を取ることができずに苦しみ続けている方が、ポップな縁切りで救われるとは限りません。世の中に万能薬などありませんし、深刻な悩みを茶化されていると感じる方も出てくるでしょう。
ですが私自身は縁切りが怒りや恨みが極限にまで到達しないと手の出ない、どろどろとしたものばかりになると、切りたい縁にふたをし続けて限界に達する方も増えてしまうのではと考えています。
病院で言えば、重症患者の命を守る集中治療室は必要です。ですが病気を防ぐ予防外来だって同じくらい大切です。ポップな縁切りは切りたい縁との関係がこじれる前の、心と向き合うワンステップになればと願っています。