本光寺の「有給休暇取得祈願法要」:休むことの大切さを再考する
本光寺は、千葉県市川市にある寺院ですが、従来の寺のイメージを覆す斬新な取り組みで注目を集めています。その中でも特に話題を呼んだのが、「有給休暇取得祈願法要」です。一見ユニークで面白おかしく見えるこの法要ですが、実は現代社会が抱える深刻な問題に切り込む、意義深い取り組みなのです。
法要の目的:価値観の見直し
この法要の目的は、私たちの社会に根付いてしまった「休むことへの罪悪感」や「忙しさが持つ優越感」という価値観を見直すことにあります。例えば、以下のような思い込みがあります:
- 忙しい人は優秀で、暇な人はダメ
- 休まない人は頑張り屋で、休む人は怠け者
- 締め切り直前の追い込みは根性があると称賛される
しかし、これらの考え方は本当に正しいのでしょうか?実は、働くことと休むことは同じくらい大切なのです。適切に休息を取ることで、心身がリフレッシュされ、結果的により良い仕事ができるようになります。つまり、休むことは怠けることではなく、むしろ生産性を上げるための重要な要素なのです。
働き方改革と有給休暇の現状
2019年4月から施行された「働き方改革関連法案」では、年10日以上の有給休暇がある労働者に対して、企業が年5日の有給取得を義務付けるようになりました。これは日本の労働環境を改善する大きな一歩です。しかし、残念ながら日本の有給休暇取得率は依然として低い状況が続いています。
その背景には、日本特有の労働観があります:
- 長時間労働を美徳とする風潮
- 周りに迷惑をかけたくないという気持ち
- 休暇中に仕事が溜まることへの不安
有給休暇の取得については、「仕事を効率よくするために休むのが先か、まず休むことが先か」という議論がありますが、本当に大切なのは「休むことの価値」をみんなで再認識することです。これがなければ、効率化を進めても新たな仕事が増えるだけで、本質的な問題解決にはならないのです。
本光寺の「有給休暇取得祈願法要」の内容
本光寺の「有給休暇取得祈願法要」では、参加者全員が「かわらけ」という素焼きの皿に自分が休めない理由を書き、それを力強く割ることで、休暇を取れない自分との決別を誓います。この行為には、自分の中にある固定観念を打ち破るという象徴的な意味があります。
法要の中心となるのは、本光寺に祀られている縁切りの神様「源三位頼政和光尊儀」です。源頼政は平安時代末期の武将で、その勇猛さから「鬼切り」の異名を持つ人物。現代では、ギャンブルや酒、タバコ、離婚、ストーカーなど、さまざまな悪縁を断ち切る神様として信仰を集めています。この源三位様に、私たちを苦しめる「休めない症候群」との縁を切ってもらおうというわけです。
お寺でこのような現代的な問題に取り組むというアプローチは、伝統と革新のバランスを取りつつ、人々の実生活に寄り添おうとする本光寺の姿勢を表しています。法要の日程は「良い休暇」にちなんで1月19日に設定され、さらに、働きすぎで119番(救急車)を呼ぶことがないようにという願いも込めて、開始時刻は13時19分。こういった遊び心も、本光寺の魅力の一つです。
社会問題への問題提起
本光寺の取り組みは、単なるイベントではなく、社会問題に対する問題提起でもあります。日本の労働生産性は主要先進国の中で最下位クラス。これは長時間労働が必ずしも成果に結びついていないことを示しています。適切な休養を取り、リフレッシュすることで、より創造的で効率的な仕事ができるようになるのです。
また、休暇を取ることは、ワーク・ライフ・バランスの改善にもつながります。家族との時間を大切にしたり、趣味に打ち込んだり、自己啓発の時間を作ったりすることで、人生がより豊かになります。そして、そこで得た経験や気づきが、仕事にも良い影響を与えるのです。
参加者の声と今後の展望
参加者からは以下のような声が聞かれました:
「普段なかなか休めないけど、お寺でお祈りすることで気持ちが楽になった」
「同じような悩みを持つ人たちと出会えて心強かった」
法要をきっかけに、職場での休暇の取り方について同僚と話し合うようになったという人もいます。
本光寺の「有給休暇取得祈願法要」は、私たちに「休むこと」の大切さを改めて考えさせてくれます。日々の忙しさに追われる前に、ちょっと立ち止まって考えてみませんか?休暇を取ることは、自分自身へのご褒美であり、より良い仕事をするための投資でもあるのです。
ぜひ、本光寺に足を運んでみてください。縁切りの神様に祈りを捧げるだけでなく、自分自身と向き合う貴重な機会になるはずです。あなたの人生に、適切な「休み」という彩りを加えてみませんか?本光寺は、そんなあなたを温かく迎えてくれるはずです。